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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Read 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) by 橘 外男 (たちばなそとお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 198,400 characters · 387 screens
「そなたの気がすすまぬものをむりにおいでとはすすめにくいが、しかし、むかしはいかな家柄なればとて、いまでは大村どのの寄人の身。ことにそなたはまだ年端もいかねば、藩中のお歴々からあらぬおにくしみをうけても、そなたのためになりませぬ。母を案じてくれる気持はよくわかりますが、いくだけはいって、わざと石藤殿にまけてこられたらいかがかな? それならさまでのときもとりますまい。
城代どのは評判の癇癖づよいおかたとやら……気はすすまずともいくだけはいって、勝負にまけてきなさったらどうな? 再三のおむかえを無下におことわりするもいかがかと思われる。さ、母の身は案じるほどのこともない。そうなされ、そうなされ」
と、すすめられて、心はすすまぬながらも、ここまで足をはこんできたのです。母がてまえをはなしたがらなくて……と、少年はいっていましたが、事実は逆で、少年自身がはなれたがらなかったのです。ですから有体にいえば、少年はわざと負けてかえるつもりで家を出てきているのです。
が、さっきからのとってつけたような、左近将監の歯のうくよなおせじをきいているうちに、少年の心にはむらむらとおさえがたい不快の念がきざしてきました。