Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Read 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) by 橘 外男 (たちばなそとお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 198,400 characters · 387 screens
「御用心めされや、かたがた! 御城代石藤左近将監殿が乱心めされたぞ! 血刀ひっさげて拙者のあとよりおうてまいらるる。そうそうに、おさけあれや!」
「なに? 御家老ご乱心とな? おう、かしこまってござる。ほれ、かたがた!」
いずれも城をさして、逃げかえっていくようすです。
卑怯なり曲者、うしろをみするとは、卑怯なり! とあとはおってきましたが、しかし将監はべつだん、侍たちをめざしているようでもありません。ただ怪猫のまぼろしばかりを、もとめているのでしょう。
例のさくらの木のしたまでくると、そこに立ちどまって、いまの侍たちのことはスッカリわすれはてたように、さくらの木のこずえを見あげて、おのれ曲者、おのれ曲者と、しきりに刀をふりまわしているのです。
おそらくほかの人には見えずとも、くるった左近将監の目にだけは、さくらの枝のかげに、怪猫のすがたがうつっていたのかもしれません。
が、刀はふりまわしていても、もうこのときには、くるった頭はいよいよその度をまして、刀をふりかざしているかと思えば、たちまちゲラゲラと笑いだし、ゲラゲラと笑いだしたかと思えば、また目をいからせて枝を見あげてにらみつけ、ヨダレをながして前を子どものようにあけっぴろげて、カラキシだらしがありません。