Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しのふちより
死の淵より
高見 順
Read 死の淵より (しのふちより) by 高見 順 (たかみじゅん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 18,084 characters · 38 screens
奴の背中には
まだでしょうか
(「群像」昭和三十九年八月号)までの間に、いろいろの機会に発表した詩をここに集めておくことにした。最後の「老いたヒトデ」(「風景」昭和三十八年十一月号)が発表されたのは、私の入院直後だったので、この詩はすでにガンの手術を覚悟してのことと、多くの人に思われたようだが、事実はなんの予感も自覚もなしに書かれた詩なのである。そういえば、『わが埋葬』のなかには死に思いをいたした詩が多く、今から思うと不気味である。
奴の背中には
奴の背中には
斜めに
タイヤの跡が黒々とついている
奴は口笛なんか吹いているが
奴の心は重いトラックのタイヤに
思いきり景気よくひかれたのだ
その証拠が陽気な口笛だ
あの気楽な足どりだ
ひかれた跡が背中に出ているのに
奴はそれに気づかない
だから奴は陽気なのだが
君は初めからすべて承知の上ひかれるがいい
君だっていっぺんひき殺されれば
奴のように陽気になれる
おれの女は
顔に斜めに
タイヤの跡をつけている
まだでしょうか
まだでしょうかと そいつがうしろから
猫撫で声で おれにささやく
まだ? まだとはなんだ
おれは何も共同便所で小便をしているのではない
まだ達者で歩いている