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むじんとうにいきるじゅうろくにん

無人島に生きる十六人

須川 邦彦

Read 無人島に生きる十六人 (むじんとうにいきるじゅうろくにん) by 須川 邦彦 (すがわくにひこ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.

N3 · intermediate · modern kanji and kana · 100,616 characters · 201 screens

Aozora Bunko

木ぎれをくわえ取ったアザラシは、とくいそうに、頭を高く水から出して、岸にむかっておよぎ帰る。ほかのアザラシは、はずかしそうに海面すれすれに、顔半ぶんを出して、そのあとにつづくのである。こんなに、われらと野生のアザラシとはなかよしになっていた。

ところが、二十五頭のアザラシ群のなかに、ただ一頭、いつも、ひときわいばって頭をもたげ、りっぱなひげをぴんとさせ、胸をそらしている、雄アザラシがあった。

このアザラシは、けっして人間をあいてにしなかった。

お友だちにならなかった。

国後や範多のような、アザラシならしの名人さえ近づけなかった。

投げてやった魚は、横をむいて、たべようともしない。

そして、

「なんだ、人間くさい魚。へん。おいらの食堂は太平洋だよ」

と、いわぬばかりに、海にはいるとすぐに、大きな魚をつかまえて、口にくわえ、水から頭を高く出して、人間に魚を見せびらかすように、たべるのであった。

そして、ほかのアザラシとよくけんかをして、きっと勝つのだ。

この強いアザラシの頭には、かみつかれた大傷のはげがあって、いっそうかれをあらあらしく強そうに見せていた。