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むじんとうにいきるじゅうろくにん
無人島に生きる十六人
須川 邦彦
Read 無人島に生きる十六人 (むじんとうにいきるじゅうろくにん) by 須川 邦彦 (すがわくにひこ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 100,616 characters · 201 screens
もうあぶない。
「右舷投錨」
の号令をくだした。
どぼん。がらがらがら……右舷の錨が、船首から海に落ち、つづいて錨の鎖の走り出すひびきも、いつもとはちがって聞える。事情は、まったく切迫している。
ところが、海底は岩で、錨の爪がひっかからない。船は、錨をがらがらひきずって、なおも流されている。
浅い海底の岩にあたって、はねかえる波と、沖の方からうちよせる波が、深夜の海に、さわぎくるうのであろう。船の動きかたのはげしいこと、甲板上の作業も、じゅうぶんにはできなくなった。
「錨が、ひけますっ」
のどもさけろとばかり、大声の報告だ。船は、錨で止らずに、暗礁へむかって、どんどん流されて行くのだ。あぶない。
「左舷投錨」
私は、すぐ号令した。左舷の錨も投げこまれた。二つの錨は、やっと海底を、岩を、しっかりとかいて、錨の鎖がぴいんとはった。
その時は、運転士と水夫長が、船首で錨をあつかい、船長の私は、船尾甲板で、指揮をしていた。帆船には、船橋はない。帆にふくむ風のようすを見て、号令をくだすため、指揮者は、船尾にいるのがふつうである。
さて、錨の爪が海底をひっかいて、しっかりと止り、錨鎖がぴいんとはれば、船首は、錨鎖にひき止められて、流れなくなる。