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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens
「なるほど」
と民弥は頷いた。
「それよろしいかもしれませぬな」
「姉小路様からお頼み受けてどうあろうと妾はあの人形を、京まで送らねばなりませぬ。お気の毒ではございますが、あなた様へは渡されませぬ。……が、どうやらあなた様にも、あの人形に執着あって! ……」
「いや、決して執着などは……」
「ホ、ホ、そうかもしれませぬが、でも妾から拝見しましたところ、あなた様にはあの人形に並々ならぬ未練を持たれ……」
「いやいや別に未練なども……」
「まあまあよろしゅうございます。……で、ともかくもあの人形を二人で大切に京都まで、お送りしようではございませぬか」
「さようでござるな。よろしゅうござろう」
――この塩梅ではこの梶子、あの人形を容易のことでは、こっちの手へ渡してくれそうもない。無理に渡せなどと云い張ったならば、いよいよ怪しく見てとられ、どのような姦策を施されるかも知れない。
それに要するに自分としては、宥免状を蔵したまま、あの人形を京まで無事に、送って行けばよいのであって、梶子と一緒に旅をして、あの人形を二人で守って、京まで行くことが出来たならば、かえって好都合ということが出来る。