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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens
「先刻見なれない武士らしい男が、数人内地の人間らしいのを連れて、こっちをうかがっていたそうでござるが、拙者以外に武士風の男など、この島にそうそういる筈ござらぬ。……いるとすると何者やら? ちと気がかりでござりますよ」
そう三十郎は不安そうに云った。
関口勘之丞が郷民と一緒に、ここの様子を見ようとして来た。それを三十郎の手下どもが見付けて、得物を揮って追いはらった。
そのことを云っているのであった。
三十郎は勘之丞達を見なかったので、何者だか解っていないのであった。
「さあ何者でございますやら?」
菊女もそう云って首を傾げた。
菊女は女装に返っていた。
だいぶやつれてはいたけれど、でも美しさには変わりがなかった。
――さあ何者でございますやらと、そう菊女は何気なさそうに云ったが、その実、心では考えていた。
(そんな内地の武士らしい人が、この島の中にいるのなら、あの人形の胸の中から、宥免状を取り出して、それを持ってここを逃げ出し、その人のところへ尋ねて行き、事情を話して援助を乞い、内地へ帰してもらいたいものだ)と。
青塚郷の乱闘の後、彼女は三十郎の捕虜同様になり、犬帰村に行ったところ、一軒の農家に人形箱があり、それを馬に積むと三十郎は、自分をも連れて裏道づたいに、××の宿の方面へ遁がれ、そこですっかり身なりを変え