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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens
が、縁あってあるお方から、隠れ扶持を貰うことになり、その人の云いつけで梶子の後見――附け人として江戸の地へ、今度派遣されて来たのであった。
三十郎は家の蔭から、梶子と民弥とを尚見守った。
宵の色が次第に濃くなって来る往来で、まだ二人は囁き合っていた。
(それにしても梶子殿と民弥とが、親しい仲だとは知らなかった)
(二人が親しい仲だとすると、よほど用心しなければならない)
三十郎はそう思った。
民弥の父親を自分が殺した。で民弥が父の敵として、自分を探し求めている。――ということを梶子に知られでもしたら、梶子の口から民弥に話され、自分は民弥に討たれようも知れない。
(梶子には絶対に明かしてはならない)
三十郎はそう思った。
(それではむしろ消極的だ。……いっそ後腹痛めぬよう、民弥めを討って取ってやろう!)
邪悪の心の持ち主の上に、惨酷の心の持ち主であった。そう三十郎は決心した。
菊女と萩丸とを乗せた駕籠が二挺、この頃本所の亀沢町の辺を、深川の方をさして走っていた。
菊女は絶えず背後を振り返って、萩丸に向かって秋波をおくり、萩丸はそれに引きつけられ、菊女の駕籠を見失わないように、自分の乗っている駕籠舁きに命じ、後を追わせているのであった。