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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens
――というそういうことであった。
手がかりがないという三十郎の言葉は、その娘の素姓と住居とが、今に解らないという意味なのであった。
「わたしはねえ、三十郎さん」
と、ややあって梶子は考え考え云った。
「娘一人の仕事ではなく、背後に恐ろしい徒党があって、その徒党が娘を使って、ああいうことをしたらしいと、そんなように思われてならないのだよ」
「私にも、そんなように思われます」
「それで妾としてはあの娘の素姓と、あの娘の住居とをつき止めて、それからそれと手操って行って、その徒党の正体と、徒党の根拠のあり場所とその人数などを知りたいのだが、肝腎の娘の素姓も住居も、今に一向知れないとあっては、そんな望みはとげられそうもない。……あんたにしてからが意気地がないねえ」
たしなめるように梶子は云った。
が、三十郎はそう云われても、たいして意にもかけないように、やはり冷然として動じなかった。が、
「梶子様」
と探るように、
「あの時の、若侍何者でござるな?」
と、ややあって詰問するように云った。
「ナニ、あの時の若侍とは?」
「萩丸様が誘拐されて、山門より外へ出ました時、あの娘の後をつけるようにして、往来へ出て行った武士がありまして、あなた様にはその若侍と、親しそうに立ち話なされましたが、あれは何者でござりまするかな?」