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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens
五十嵐右内をおっとり囲み、捕えようとする紀州藩士の群と、それを助けようとする鵜の丸兵庫を、やるまいとする紀州藩士の群――この二組の人渦が、田圃の二所で渦巻いている。
悲鳴!
太刀音!
仆れる音!
二つの人渦は次第次第に、その間隔を大きくして来た。
多勢に無勢、刻一刻、右内は気力を失って来た。一人二人は斬ったらしい、血にぬれた刀を握っている手が、しこりで今は動かなくなった。足もよろめきを覚えて来た。
と見てとった紀州藩士達は、左右前後から襲いかかった。
兵庫に至ってはそうではなかった。
生死は知らず三人あまり、紀州藩士を斬って仆し、懲りずまに尚もかかって来る藩士を、刀上段に振りかぶり、睨みながらあしらっていた。
と、その眼に見えたのは、十数間の彼方において、同志の右内が紀州藩士に、捕えられようとする姿であった。
(一大事!)
と兵庫は思った。
「五十嵐殿オ――ッ」
と大音に声かけ、
「しっかりなされい! お助けに参る!」
前にある敵を一刀に仆し、左右にいた敵が驚いて、飛び退いた隙を真一文字に、右内の方へ駆けつけようとした。
と、これより少し以前から、数間はなれて立っているところの、積み藁の蔭に佇んで、様子を見ていた武士があったが、この時ソロリと刀を抜くと、平青眼にピタリとつけて辷るがようにスルスルと出で、兵庫