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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Read 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,496 characters · 368 screens
……ホホ、ホ」
とあでやかに笑い、
「ご機嫌よろしいご様子を拝し、梶子うれしく存じ上げまする」
ここでまた梶子はあでやかに笑った。
「ようこそ、梶子殿、ようこそ参られた」
姉小路卿もなつかしそうに云って、
「ゆっくりなされ、ゆっくり話そう。……それにしても相変わらず美しいのう」
二人は京都での知己であった。
というのは梶子はいうところのスパイ――女細作であるところから、京都にいるうち姉小路卿家や、鷹司関白家や所司代邸へ、時々伺候したからであった。
「相変わらずのお口のうまさ、このお婆アさんをとらまえて、美しいなどとホ、ホ、ホ」
堂々たる公卿の外交家を相手に、冗談めいた口を平然と利く。――ここがこの女の偉いところであり、そうしてこの女の背景に、大きな力のある証拠でもあった。
「その若さ美しさで、お婆アさんなどとは面妖な話、そういう美しいお婆アさんなら、このお爺さん大満足、アッハッハッ、ご用に立ちましょうわい」
公卿とも思われぬ平民的口調で、姉小路卿も受け答えした。
ここがこの公卿の偉いところであったが、一方卿は梶子という女が、幕府の細作だということを充分知っているところから、わざと心を打ちあけ顔に、気軽そうに応対するのであって、いわば狐と狸との、化け比べのようなものなのであった。