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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Read 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 289,044 characters · 575 screens
面白いわねえ。美しさというのはこういうところから生れるのだと沁々思います。
ゆうべは、かえって来た野上さんや何かの歓迎会があってレインボーへ行って、外へ出たら大きい牡丹雪が舞い狂って居りました。バスは前のガラスにその牡丹雪が忽ち白くつくので、折々車掌さんがヘッドの方へ出てはらって又進みます。そんなにして目白まで来て、それからすっかり白い道を一足一足家へたどりつき。夜目に雪の白さは、そこをゆく白い足袋が黒っぽく見えるほどでした。街燈の真下にかえると何か黒い小さい蛾がとびちがっているような影が雪の上をかすめている。そういう景色も面白く。たかちゃん、かえったらすぐコップに雪を入れサトーを入れたべました。「どうじゃろ東京の雪は、大味かしら」と云ったには笑いました。そうかもしれないわ。水気の多い春の雪ですから。
雪が私の髪や肩やショールにかかる。その雪は、家を出るときよんで来た詩のこころと通じるところがあって、私は傘で雪をよけるよりは、雪よ、雪よと顔もさし出すような心持です。頬っぺただの、額だの、唇だの。雪がふりかかります。真直に躊躇なく降りかかるの。雪の片々に心をもたせかけて歩きます。