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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Read 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 327,364 characters · 638 screens
そこからは庸三の坐っている部屋のなかも丸見えであった。庸三はきまりがわるくなったので、にわかに茶の間へ出て行って見た。葉子は姐御のようなふうをして、炉側に片膝を立てて坐っていたが、
「お前なんぞ松川さんが愛していると思ったら、飛んだ間違いだぞ。おれ今だって取ろうと思えばいつでも取ってみせる。」
という言葉が彼の耳についた。
するうち嵐が凪いで、書生はその辺を飛びまわっている男の子の機嫌を取るし、色の浅黒い、目の少しぎょろりとした継母は匆々にお辞儀をして出て行って、葉子は子供のふざけているのに顔を崩しながら、書生たちにもお愛相よくふるまっていた。やがて書生たちも、烏賊の刺身や丸ごと盆に盛った蟹などを肴にビールを二三杯も呑んで、引き揚げていった。
その晩、庸三が煩く虫の集まって来る電燈の下で、東京の新聞に送る短かいものを書いていると、その時から葉子は発熱して、茶の間の仏壇のある方から出入りのできる、店の横にある往来向きの部屋で床に就いてしまった。触ると額も手も火のように熱かった。顔も赤くほてって、目も充血していた。
「苦しい?」
「とても。熱が二度もあるのよ。