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しゅくず
現代日本文学館8 徳田秋声
徳田 秋声
Read 現代日本文学館8 徳田秋声 (しゅくず) by 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 327,364 characters · 638 screens
」
「先生は大家よ。私なんかと一つには言えないじゃありませんか。こんな時こそ、私を庇護ってくれなきゃいけない人なのに、先生は私を突き落とすようなことをしたのよ。先生の言葉一つで、私の運命は狂わせることもできるのよ。」
「僕の言ったことに、そんなに悪意があるとは思わないな。」
そこへ洋食と酒が持ちこまれて来た。
「御免なさいね。こんな話よしましょうね。」
女中は煙草の灰の散った食卓に台拭巾をかけて、そこへ通しものと猪口と箸とを並べた。
初めから解りきったことだったが、葉子にまくし立てられては、防ぎの手はなかった。しかし今夜の彼女は、捲し立てるには痛手を負いすぎていた。それに今の場合、葉子にとってもっとも大切なことは善後策であった。そしてそれには庸三をして庸三の過ちを償わせることが、何よりも必要だと思われた。
そうしているうちにも、葉子は時々聞こえる自動車のサイレンや爆音に聴耳を立てていた。彼女の神経に、それが黒須の追迹のように思えてならなかった。世間のすべてが――庸三すらもが今は彼女を迫害するのであった。
二十
露骨な争いと、擬装の和解との息詰まるような一夜が明けた。