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しろばなのあさがお

白花の朝顔

泉 鏡花

Read 白花の朝顔 (しろばなのあさがお) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 30,880 characters · 62 screens

Aozora Bunko

寄せたその片褄が、ずるりと前下りに、前刻のままで、小袖幕の綻びから一重桜が――芝居の花道の路之助のは、ただこれよりも緋が燃えた――誘う風にこぼるる風情。

――実は帯を解いて、結び直す間がなかった、茶屋が立籠んだからなので。――あれから、直ぐにその茶屋へ引上げて、吸物一つ、膳の上へ、弁当で一銚子並べたが、その座敷も、総見の控処で、持もの、預けもの沢山に、かたがた男女の出入が続いたゆえ、ざっと夕餉を。……銚子だけは手酌でかえた。今夜は一まず引上げよう、乗ものを、と思う処へ、番頭津山が急いで出て、もうお俥は申しつけました……という、客あつかいに馴れたもの。急所を圧えてこっちからは乗出させぬ。ご都合まで、ご存分な処まで、は、は、は、と口を圧えて笑うと、お絹が根岸の藍川館――鶯谷へ、とこの人の口でいうと、町が嬉しがって、ほう、と微笑んで鳴きそうに聞えた。寂しい処でございますな、境さん――これはお送り下さらないではなりますまい。……勿論。

京では北野へ案内のゆかりがある。切通しを通るまえに、湯島……その鳥居をと思ったが、縁日のほかの神詣、初夜すぎてはいかがと聞く。