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ひゃくあしちがい
百足ちがい
山本 周五郎
Read 百足ちがい (ひゃくあしちがい) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 28,491 characters · 56 screens
「あら、そうすればそれで、お帰りになるんですの」
「――だって、それは、……どうしてですか」
「どうしてって、なにがどうしてですの」
みつ枝は頬を赤くし、愛らしい眼をいっぱいにみひらいて、真正面からしんけんにこちらを見まもった。又四郎は窮した。この種の含みのある言葉のやりとりは、彼には元来がにがてである、それでさりげなく話題を変えようとしたが、女性の敏感でいち早くみつ枝はその先手を打った。
「だってもし貴方が予定どおり帰国なさるおつもりなのでしたら、もうあの話を父か母にして下さっていなければならない筈ですわ」
「あの話、……っていうと、つまり、それは」
「もちろんあの話ですわよ、いやですわ、ご存じのくせに」
こういってみつ枝嬢はもう何割かしら頬を赤くした。又四郎は彼女のほのめかすものがなんであるか、朧ろげに了解し、これは比較的にいって問題が軽くないと思った。しかし彼はまたすぐに、かかるさきくぐりが相手を侮辱するものであることに気づき、非常な勇気をふるい起こして反問した。
「――間違ったら、その、お赦しを願いたいのですが、そのう、ですねえ、今の、……そのお話というのは、つまるところ、縁談のような……」