Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Read 真珠夫人 (しんじゅふじん) by 菊池 寛 (きくちかん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 289,296 characters · 578 screens
六
信一郎は、女王の御前仕合で、見事な勝利を獲た騎士のように、晴れがましい揚々たる気持になっていた。
「然し……」と、三宅と云う青年が、必死になって駁論を初めようとした時だった。
廊下に面した扉を、外からコツ/\と叩く音がした。
六
「誰方?」
夫人は、扉を叩く音に応じてそう云った。
「僕です。」
外の人は明晰な、美しい声でそう答えた。
「あら、秋山さんなの。丁度よいところへ。」
夫人は、そう云いながら、いそ/\と椅子を離れた。信一郎が、入って来たときは、夫人はたゞ椅子から、腰を浮かした丈だったのに。
夫人が、手ずから扉を開けると、『僕です。』と、名乗った男は、軽く会釈をしながら、入って来た。信一郎は、一目見たときに、何処かで見覚えのある顔だと思ったが、一寸思い出せなかった。が、一目見た丈で、作家か美術家であることは、直ぐ解った。白い面長な顔に、黒い長髪を獅子の立髪か何かのように、振り乱していた。が、頭は極端に奔放であるにも拘わらず、薩摩上布の衣物に、鉄無地の絽の薄羽織を着た姿は、可なり瀟洒たるものだった。夫人はその男とは、立ちながら話した。
「暫く御無沙汰致しました。