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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Read 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 183,656 characters · 363 screens
(六)蟹
(七)三条大橋
なにを呼ぶか、人の声が水に響いて遠近にきこえる。四面のかかり船は追いおいに灯を掲げた。すべて源氏の船ではあるまいか。わたしは敵に囲まれたように感じた。(明治39・11)
(六)蟹
遼陽城外、すべて緑楊の村である。秋雨の晴れたゆうべに宿舎の門を出ると、斜陽は城楼の壁に一抹の余紅をとどめ、水のごとき雲は喇嘛塔を掠めて流れてゆく。
南門外は一面の畑で、馬も隠るるばかりの高粱が、俯しつ仰ぎつ秋風に乱れている。
村落には石の井があって、その辺は殊に楊が多い。楊の下には清国人が籃をひらいて蟹を売っている。蟹の大なるは尺を越えたのもある。
「半江紅樹売二鱸魚一」は王漁洋の詩である。夕陽村落、楊の深いところに蟹を売っているのも、一種の詩料になりそうな画趣で、今も忘れない。(明治37・10)
(七)三条大橋
京は三条のほとりに宿った。六月はじめのあさ日は鴨川の流れに落ちて、雨後の東山は青いというよりも黒く眠っている。
このあたりで名物という大津の牛が柴車を牽いて、今や大橋を渡って来る。その柴の上には、誰が風流ぞ、むらさきの露のしたたる菖蒲の花が挟んである。
紅い日傘をさした舞妓が橋を渡って来て、あたかも柴車とすれ違ってゆく。