Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
Read 綺堂むかし語り (きどうむかしがたり) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 183,656 characters · 363 screens
そば切り庖丁などという詞はいつか消滅するであろう。
人間が贅沢になって来たせいか、近年はそば屋で種物を食う人が非常に多くなった。それに応じて種物の種類もすこぶる殖えた。カレー南蛮などという不思議なものさえ現われた。ほんとうの蕎麦を味わうものは盛か掛を食うのが普通で、種物などを喜んで食うのは女子供であると云うことになっていたが、近年はそれが一変して、銭のない人間が盛・掛を食うと云うことになったらしい。種物では本当のそばの味はわからない。そば屋が蕎麦を吟味しなくなったのも当然である。
地方の人が多くなった証拠として、饂飩を食う客が多くなった。蕎麦屋は蕎麦を売るのが商売で、そば屋へ行って饂飩をくれなどと云うと、田舎者として笑われたものであるが、この頃は普通のそば屋ではみな饂飩を売る。阿亀とか天ぷらとかいって注文すると、おそばでございますか、饂飩台でございますかと聞き返される場合が多い。黙っていれば蕎麦にきまっていると思うが、それでも念のために饂飩であるかないかを確かめる必要がある程に、饂飩を食う客が多くなったのである。
かの鍋焼うどんなども江戸以来の売り物ではない。