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こどうひゃくわ

胡堂百話

野村 胡堂

Read 胡堂百話 (こどうひゃくわ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 124,386 characters · 248 screens

Aozora Bunko

と、人なつっこく笑ってみせた。そして、例のまるまっちい声で、

「野村さんのものは、私も、読んでいますよ」

といった。「野村さんのもの」といって、あえて銭形とは言わなかったから、何を読んでいるのかは知らない。私は、新聞記者として、明治大正の一流人物には大抵、逢ってきたが、少々ばかり皮肉っぽいのを別にすれば、首相としても、外交官としても、吉田さんは、やはり一級品だと思う。

吉田さんが、ますます元気なのは目出度いが、私がこの随想を書きはじめて以来、芦田均氏が死んだ。金森徳次郎氏が死んだ。その少し前には、輸銀総裁川上弘一氏が死んだ。みんな一高での友人である。

私たちが一高へはいった時、一番は、若くて死んだ仏文学者の福岡易之助君(白水社主)だったが、やがて、芦田、川上の両者が、グングン追いこんで、鼻の差くらいで、終始トップを争ったと記憶している。

芦田君は、腕力は私より弱かったが、妙にすばしっこいところがあった。何かのことで、私をからかったから、つかまえて、ギュウギュウいわしてやろうと、運動場を隅から隅まで、六、七遍も追い回したが、ついにつかまえかねて、息を切らしてしまった。