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とらのきば
虎の牙/透明怪人
江戸川 乱歩
Read 虎の牙/透明怪人 (とらのきば) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 193,761 characters · 388 screens
古井戸の底
」
「逃げた。あっちだ。透明怪人が、大友君をかかえて、ぼくをつきとばして、逃げたんだ。早く、おっかけてください。」
係長をさきにして、みんなが、黒川記者のゆびさす方角へ、懐中電灯をふり照らしながら、かけだしました。
しかし、あいては目に見えないやつです。それに、すみずみは、やみにとざされた洞窟の中です。警官たちが、いくらあせっても、もう、まにあいません。いくらさがしても、ついに透明怪人はみつかりませんでした。
古井戸の底
捜索隊の人々は、洞窟の中の部屋という部屋を、さがしまわって、入り口のところまでもどってきました。その入り口の穴には、ほそびきをたてよこに、はりめぐらして、透明怪人が、逃げだせないようにしてあるのです。そして、穴のそとには、三人の警官が、見はりをつづけていたのです。
「きみ、異状はなかったかね。」
中村係長が、穴のそとの警官に、声をかけました。
「はあ、異状ありません。」
「このほそびきは、すこしも動かなかったのだね。」
「はあ、動きませんでした。」
もし、透明怪人が、ここを通って、逃げたとすれば、かならず、ほそびきが動くはずです。それが動かないというのですから、怪人はここを通らなかったと考えるほかはありません。