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らしんのにょせん
裸身の女仙
野村 胡堂
Read 裸身の女仙 (らしんのにょせん) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,437 characters · 29 screens
「何んか、遠くの方で、変な声がするようだ。狼に出られては迷惑だ。急げ鹿造」
「ヘエ」
鹿造は、お鳥を引立てると、手近の立樹の幹へキリキリと縛りました。
「それでよし、サア、引揚げろ」
そう言い乍ら郷太郎は駕籠へ入ると、もう一度振り返って、
「お鳥、故郷の月は格別だろう、お前の友達の吠える声も次第に近くなったぞ」
捨ぜりふを残すと、駕籠を促して里の方へ、一散に駆け降ります。
それから狼の大群の近づくまで、ほんの四半刻もかかりませんでした。
夜空に籠った陰惨な喰りに、お鳥はハッと首を挙げると、縛られた大樹を繞って幾百の光り。
それは、お鳥の匂いを嗅いで集った、千疋狼の血に渇く眼だったのです。
「…………」お鳥は凝っと唇を噛みました。山で育ったお鳥はこの悪獣の貪婪な食慾と、執拗極まる性質を知り過ぎるほど知って居たのです。
「…………」
お鳥は黙って、八方に眼を配りました。縛めさえ脱けば、逃れる道もあるでしょうが、何んなに意地悪く縛ったものか、あせればあせるほど縄目が喰い込んで、月の光の下に、豊満な肉塊が、ただピチピチと蠢めくばかりです。
そのうちに、四方から囲んだ狼の壁は、五寸ずつ一尺ずつ輪を狭めて、一番先に立った灰色の親狼は、お鳥の目の先から三間ばかり、火のような眼をキラと光らせて、物を狙い撃つ恰好に、カッと赤い口を