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きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
Read 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) by 山川 方夫 (やまかわまさお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 67,486 characters · 144 screens
夫は笑い、振りかえった。
「いまだって、君はまだ僕を知っちゃいない。もうすぐ、もっとよく知ることになるぜ」
「もうすぐ?」
「そうだ、もうすぐだ」
夫は前方をみつめたままでいった。
「さっきもいっただろう? 僕は、いったん自分のものにしたやつは、おいそれとは手放したくない、もし手放さざるを得ないときは、よっぽど有利な、気に入る補償でもないかぎり、面白くないんだ、って……」
夫は妻を眺め、その目を窓の外の風景に移した。それは、氷りつくような冷たい目つきだった。
「もうすぐ、いつも君たちが手を触れあって遊ぶあたりになる。……さ、運転を、君にかわってもらおう」
「どうして?」
「いいからかわるんだ」
夫はブレーキをかけ、いったん車を停めると強引に妻を左側の席に押しやり、自分は助手席にと入れ替った。
「さあ、走らせるんだ、ゆっくりとな」
夫の声や態度は別人のように威圧的で、妻はいいなりになるほかなかった。
車が滑りだすと、夫は身を斜めにし、身体をシートの背にかくした。運転する妻の膝近くで、彼女を見上げながらいった。
「……そろそろ、守谷の車がやってくる時刻だ。いつも後ろからつづいてくる君の車の見えないのを不審がって、でも約束の時間もあることだし、今日は何かの都合で君が先に行ったのかと思いながらやってくるさ。