Japanese reading practice

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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

Read 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 26,416 characters · 53 screens

Aozora Bunko

四

と去定は云った、「経費削減となると、まず薬に手を打たなければならない、黄鶴堂の主人を云いくるめるのは一と仕事だろうが、――まあいい、先にむじな長屋へいって、治兵衛にこれを渡してくれ」

登は紙包みを袂に入れて立ちあがった。

四

中富坂の長屋へ着くちょっとまえに、すっかり雲に掩われて雷が鳴りだし、差配の住居へはいるとたんに、激しい夕立が降りだした。――治兵衛は草鞋を作っていたが、登を見ると、それを抛りだすようにして立ちあがったなり、養生所へ迎いをやったところだと云った。

「佐八が吐血したものですから」と治兵衛は傘を出しながら云った、「――使いの者にお会いでしたか」

「いや、よそへ廻っていたのだ」と云って登は紙包みを治兵衛に渡した、「これを新出さんから頼まれて来た」

治兵衛は傘を下に置き、黙ったまま、両手で押し戴いて受取り、仏壇の中へしまった。それからもあい傘で路地へはいり、どぶ板を踏みながら佐八の家へいった。その一帯は土地が急に低くなっているため、強い降りになるとたちまち水が溢れる。小石川堀へ通ずる大溝への排けが悪いから、――そのときも、僅かなあいだにどぶ板が浮きかかっており、長屋の女房たちがどしゃ降りの中で、いさましく排け口の塵芥をさらっていた。