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じじょにかえて
近代浪漫派文庫 29 大木惇夫 蔵原伸二郎
蔵原 伸二郎
Read 近代浪漫派文庫 29 大木惇夫 蔵原伸二郎 (じじょにかえて) by 蔵原 伸二郎 (くらはらしんじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,296 characters · 17 screens
孫娘とふたりで
動物園にて
風の中で歌う空つぽの子守唄
遊んでくれるみち
遠い分校にゆく道
孫娘とふたりで
あかるすぎる九月の夕暮
だれもいない丘の石に
二人はこしかけていた
ぼくが何を考えているかも
しらない孫娘は
はしやいだ声でいつた
「おじいちやんの髪の毛 雲みたい」
その時 ぼくは ばくぜんと
「死」について考えていたのだ
なるほど 丘のむこう
暮れなずむ とき色の空に
白髪のような雲がひとかたまり
光つていた
動物園にて
「おじいちやんは いまごろ
どこらへんを歩いているんだろうな、
もう死んでいるのかなあ」
と、遠くにいる四歳の孫娘が考えた時
その時
じいさんはばあさんと
二十年ぶりに動物園に行つて
ゴリラの檻の前に立つていた
「ほら ばあさんや、
ゴリラという奴は、何かやる前に
ちやんとやり方を考えるね。えらい奴じや
のう」
「まあ、ほんとにそうですね。あなたより
よつぽどえらいようだよ」
二人はとぼとぼと手を振りあつて
満開の桜の花の下をあるいていつた
風の中で歌う空つぽの子守唄
今日は日曜日
田舎の小学校の庭は
ひつそりしている
窓々に子供たちの
明かるい顔も見えない
ふく風の中で
お前はおじいちやんの腕に抱かれている
お前の祖父は干乾びた山椒魚のようだ