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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 157,440 characters · 313 screens
お栄の話はかなり奇ッ怪ですが、この女の持って居る一種の媚態は、いずれ真面目な家庭で習得したものではなく、長い間見世物の娘太夫で、多勢の客の好みに応じて、自然に会得したものとわかると、不思議でも何んでもなくなります。
「――」
平次は黙ってその先を促しました。
「今から三年前、東海道を旅興行中、親方が土地の顔役に怨まれて既に命までもという大難に逢った時、伯父の半兵衛に助けられ、それから打ち解けて附合うようになり、到頭私は納得ずくで伯父にもらわれ、姪ということで養われました。旅から旅への暮しもそこでお仕舞いになり、私は江戸に住みついて、何時の間にやら三年も経ってしまいました」
お栄の物語はこれで終りました。整然と筋の立つもので、近江屋半兵衛との関係――伯父姪の義理もこれで一応は説明されます。
「ところで、半兵衛の腕に彫ってあった、賽の目の六は、ありゃどういう入墨なんだ。お前は知って居るだろうと思うが――」
「いえ、何んにも知りません。主家を退転して禄を離れた当座、その日にも困って賭場の用心棒もしたことがあると、笑い話にしておりました。多分そのやくざ附合いの形見じゃございませんか」