Japanese reading practice

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 157,440 characters · 313 screens

Aozora Bunko

「昌平橋の上に立って手拍子を三つ打ちますよ」

八五郎はまだそれに憑かれているのでした。

「たいした役には立つまいが、やって見るがいい」

「いいんですか、親分」

「最初は焼き捨てようかと考えたが、思い直してみると、その文句を覚えてしまえばこっちでは要らない紙片だ。そいつを敵の手に渡して、どっちが先に謎を解くか、試して見るのも面白かろうよ」

「大丈夫ですか、親分」

そう出られると八五郎の方が少し心配になります。

話がきまると、実行は至って簡単でした。平次はわざと家に残って、八五郎だけたった一人、くだんの紙片を有難い御護符のように両手にささげたまま、お能の橋がかりから出るような足取りで、路地の外へ、そして金沢町の通りへ出て、昌平橋の方へ行ったのです。

夏の朝陽はもう高くなりましたが、朝からの緊張で八五郎はまだ朝飯も済んでいないのでしたが、さすがにそんな事を考える暇もなく、昌平橋の上に立って、暫らく四方をながめました。

東は筋違御門から花房町、仲町へ、南は八つ小路から阿部伊豫守、青山下野守の御屋敷のあたりまで、往来の人も少なくありませんが、肝じんのお静の姿はもとより、それを連れて来そうな人間も見当らなかったのです。