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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 157,440 characters · 313 screens
半兵衛は釣りに行くということにして、谷中の五重の塔から持ち出した小判を、少しずつ運んで三ヶ所にかくしたに違げえあるめえ」
「手が込んでいますね」
「外の仲間に隠れて一万両を独り占めにする気だったが、その仲間が半兵衛に劣らぬ悪智慧の逞ましい奴らで、容易のことでは誤魔化せなかった」
「――」
そんな話をしているうちに、平次と八五郎と、十人の下っ引は、堀切の花菖蒲園の裏、綾瀬川のほとりに立って、あちこちを物色しておりました。
「八、これだ」
平次が指さしたのは、半兵衛が釣り場に使っていたらしい石垣で、その石垣の二列目の最初の石が、一つだけ際立って苔が剥げて、何んとなく不安定な恰好になっているのでした。
多勢の人の手で、石垣は何んの苦もなく取り除かれ、土を掻き捨ててその奥をのぞいて見ました。
中は思いのほか広い穴で、その中に樫の一枚板で出来た、がん丈な箱が押し込んであるのです。
「道具を借りて来て、こいつを掘出しましょうか」
八五郎はもう近所の百姓家に飛び出しそうにしております。
「いや、それは後でよかろう。まだ二ヶ所あるんだ、日が暮れると面倒だ」
平次は穴の中の箱をのぞいておりましたが、正面の板に幅三分長さ二寸あまりの穴のあるのを見つけると、思い当る様子で、自分のふところから、谷中へ持って行って、五重の塔の扉を開ける時使っ