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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 157,440 characters · 313 screens
「?」
「遠くから持ってきたのなら、墨が乾いているから、灰などは付く筈はない。馬糞墨で乾きが遅いにしてもこいつは両国や谷中から持って来た手紙じゃない」
「親分」
八五郎はもう一度スタートに並んだ選手のように張りきりました。
「これで、相手は女だということと、此処から遠くないところで見張っているということがわかるだろう」
「ヘエ」
「ところで、まだ気の付いたことがあるよ、――この間からお前は小僧を三度も追っかけてるが、路地の外へ出ると、大地へ消え込んだように姿を見失っているだろう」
「ヘエ」
「路地の外は八方見通しの大通りだ。ところが、手紙を投り込んだり、助十を刺したり、勝手な真似をしている小僧が、髪を掴まれるように追われているのに、どうしても捕まらねえ」
「?」
「ことに助十を刺した時などは、逃げようのないところを、恐ろしい手際で逃げている、――そればかりじゃねえ、昌平橋の上へお前が手紙を持って行った時だって、時刻を打ち合せたわけでも何んでもないのに、相手はちゃんと、天水桶の蔭にお雪をつれ出して、此方の出様を待っていたじゃないか」
「成る――」
「こいつは天眼通ででもなきゃあ出来ないことだが――相手の曲者も人間に相違ないから、俺はその時巣が近いといった筈だ」