Japanese reading practice

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 157,440 characters · 313 screens

Aozora Bunko

、第3水準1-14-88)の声をかけます。

「バカッ」

高らかなボーイ・ソプラノが、その時橋の向う側、井伊様屋敷のあたりで高鳴ります。

「下郎ッ、まてッ」

大橋要人、おっ取り刀でかけ出しましたが、もとより追いつくことではありません。

「大橋氏、大人気ない、――それよりは一万両の金子を、一刻も早くお蔵に納めることじゃ」

いくらか思慮のある津田孫太郎はそれを止めました。

六月の陽がサンサンと江戸のいらかに降る中を、中ノ橋を越した一万両の行列は、軽子橋を右手に見て、数馬橋を渡り南小田原町から尾州家蔵屋敷の裏町にかかりました。

「あッ、あれは何んだ」

一万両の行列が、暫らく躊躇したのも無理のないことでした。行列の前後は、あやしの靄が立ちこめて、百千万の銀の征矢が、右から左から、前から後ろから縦横無尽に射込まれるのです。

「騒ぐな各々、相手は我々の行列に花火を打ち込んだのだ。構わず行列は、裏門へお入り召され」

落ちついた声、津田孫太郎が早くも相手の撹乱策を看破ったのです。

裏門へ差しかかって、ホッと安堵した一万両の行列へ、花火玉を打ち込むというのは、驚くべき頭の良さですが、その上を越す津田孫太郎の冷静な比判力が、危ないところで行列の混乱を救いました。