Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 157,440 characters · 313 screens
お静は思わず入口に立ち塞がって、お銀の帰りを止めるのです。
「有難う御座います、お神さん。御親切は身に浸みて嬉しいけれど、私はやはり谷中へ帰らなきゃなりません――それじゃ親分」
お銀は平次にあいさつをして、何んの躊躇もなく、薄暗い土間で下駄など探しているのでした。
「親分」
八五郎は妙に穏やかでない心持でした。ここで親分の平次が、たった一と言「まア宜かろう」といってくれさえすれば、お銀はそれを力に思いきって、恐ろしい夜道を谷中へ帰る気にならなかったでしょうが、苦蟲をかみつぶしている平次の顔を見ると、八五郎輩が横合いから口を出して、それを何う斯ういう筋合ではないような気がするのです。
「よし、それじゃ、おれが送ってやろう」
ツイ不用意な言葉が、八五郎の唇に上りました。この無類のフェミニストは、お銀の困惑を黙って見ているにしては、少しばかり人が好過ぎたのです。
「ま、済みませんね、それじゃお願いいたします。銭形の親分さん、お神さん」
お銀は丁寧に別れのあいさつをして、促し立てる八五郎と一緒に、路地の星明りに立っておりました。
「待って下さいな、八五郎親分」
さっさと先へ行く八五郎の後ろから、粉々として掛香が匂います。