Japanese reading practice

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 157,440 characters · 313 screens

Aozora Bunko

「気がついたか、お栄さん」

「あ、親分さん、怖いッ」

平次の顔を意識すると、お栄はいきなり平次の首っ玉へ、たった三つになる幼な児のようにひしひしと縋りつくのでした。

「どうかしたのか、お栄さん」

「私は、本当に、殺されるのかと思いました」

漸く正気づいたらしくお栄は、極り悪そうに平次の首っ玉から離れると、あわてて衣紋などを直すのです。

「ここから飛び出して行ったのはありゃだれだ」

「――」

「お前が知っている者だろう、――音も立てずに縛られたところを見ると」

お栄のような若くて健康なものが、近所の者にも知れないように縛り上げられたことは、早くも平次の注意を引いたのです。

「いわなきゃならないでしょうか、親分」

「それは、そうとも」

「隠しきれることではないかも知れません――あれは宇八どんですよ。皆んな本所へ行くって、御近所の衆もそこそこに帰ると、いきなり裏口から入って来て、無躾なことばかりいった揚句、私が聴かないので――」

お栄の言葉は悩ましく意味深長なものでした。

「先刻本所から来た男の顔を、お前見なかったのか」

平次は継穂のないことを、気ぜわしく訊ねました。

「いえ、逢ったのは私ですが、――見たことのない人でした」