Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 157,440 characters · 313 screens

Aozora Bunko

大変なことがあるから、兎も角も来て見てくれって」

谷中の菊はその土地の下っ引で、平次よりは八五郎の方がよく知っております。

「お話中だがな、八」

「ヘエ」

「お前はあれから毎晩近江屋へ行って泊っているのか」

「ヘエ、約束は約束ですから」

「あきれた野郎だ。お栄なんかに変なことをすると、勘弁しないよ」

「大丈夫ですよ、叔母さんと一緒で。毎晩飯が済むと仕事の残りを持って行って、上野の亥刻が鳴るまで有難いお話を聴かされるんで、大師様の話ですよ。石の団子のことだの、逆葉の芦の話だの」

「その有難い話を聴問しながら、お栄の顔をマジマジとながめているんだろう、罰の当った野郎だ」

「話が済むころから寝酒が出て、ホロッとした心持で銘々の部屋に引取りますよ。叔母さんもいける口だし、お栄も猪口で二つや三つはやるし、悪くありませんよ、あのお伽は」

平次と八五郎は谷中の森に入って行きました。木立の中に墓石が散在して、小鳥が鳴いて渡る頭の上には、悠然と青空を劈いて、五重の塔が聳え建つ風物は、江戸の町の雑沓から、僅かに数丁の距りとも思えぬ物淋しさがあります。

「あれですよ、親分」

とある藪の中に、逞ましい松の樹を囲んで二十人ばかりの人間がうごめくのを、八五郎は遠くから指さしました。