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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 157,440 characters · 313 screens
「なるほどね」
「そこでハタと困った揚句が、お前をお栄の望み通り用心棒に入れたというわけさ」
「ヘエ、恐ろしい企みですね、親分」
「まるで由比の正雪みたいだろう――もっとも天下を狙ったわけじゃねえ、多寡が女の二の腕だ――どうだ、八。見たか」
「?」
「何んという変な顔をするんだ。お栄の二の腕を見たかと聞いてるのだよ」
「まだそこまではねえ、親分」
「何んという間抜けなんだ。お前もまだ三十そこそこの良い若い男だろう、綺麗な新造と十日も同じ屋根の下に寝ているくせに、二の腕も見せてもらえないなんて」
「ヘエ、相済みません」
「臍の穴を覗いて見ろというんじゃねえ――一々俺にいわれなくたって、それくらいのことに気のつかない筈はあるめえ。朝夕顔を合せている癖に、唯もうニヤリニヤリとヤニ下がっていたんだろう。だからお前は間抜けでお人好しで、食いしんぼうで――」
「見て来ますよ、見りゃ宜いんでしょう。何んの女の子の二の腕くらい、力づくでねじ伏せたって、畜生ッ」
平次に漫罵を浴びせられて、八五郎は面喰って飛び出してしまいました。
「まア、お前さん。あんな事をいって、八さんが気の毒じゃありませんか」