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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(九) 全十冊
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(九) 全十冊 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 41,029 characters · 82 screens
六
銭形平次は重三郎の長物語の中から、幾つかの矛盾を見出して、その場を去らせずこの曲者を縛ってしまったのです。
六
一件が落着してから、八五郎は訊ねました。
「どうして重三郎が悪者と判ったんです。親分」
「なんでもないよ――橋の下から大家の跡取りをさがし出したというのは、話が少しウマ過ぎたよ。あんなに手軽にわかるものなら、父親の市太郎は十五六年も放っておくはずはないじゃないか。それに本当の跡取なら、少々陽に焦けていても、言葉遣いや折屈みが下手でも、すぐ小松屋へ伴れ込むのが本当じゃないか。わざわざ小田原まで連れて行って、行儀作法を習わせたと聴いて、お前は変だとは思わなかったか」
「へエ」
ガラッ八はどっちつかずの返事をしました。
「それに、重三郎はそんなたいした男じゃないし、なんとか小町に好かれそうな人柄でもない。江戸の町娘は見識が高いから、親の気に入らなくて勘当された許婚を、一年も経たないうちに忘れて、あんな埃りっ臭い荒っぽい男に惚れるはずはないよ」
「なるほどね」
ガラッ八もそれは簡単に承服しました。自分も埃っぽくない男のカテゴリーに編入されるつもりでしょう。