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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九) 全十冊

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(九) 全十冊 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 41,029 characters · 82 screens

Aozora Bunko

うちに一緒にしてやるのに、二本差や大店に生れた娘や息子は、さぞつまらなかろう――って」

「ひどく悟ったことを言うじゃないか」

「これからが大変で――」

「お前の大変には驚かないが――酒はもうなくなったとさ。ロレツが怪しくなるからこの辺でおつもりとしようじゃないか」

「ヘエ、どうぞ御自由に」

「あれ、八の野郎が変な挨拶をしているよ。もう一本欲しいって謎だろう」

「この話はただで聴かしては勿体ないですよ。何しろ、朝倉屋の三五兵衛の倅、何不自由なく育った十九の竜吉が、凧糸を首に巻いて、自殺していたんだから、可哀想じゃありませんか」

「凧糸を首に巻いて――」

「その凧糸に羽子が一つ挾んであったとしたら、どんなものです」

「羽子を?」

「竜吉がせがんでやっと、文使いの定吉に貰わせた羽子と聴くと、親分でも、ちょいとホロリとするでしょう」

「凧の糸は細いものだよ。あれを巻いて、人間は首を縊れるかえ、八」

「そう思うのは素人量見で――凧は自分の名の竜の字を書いた六枚張り、この辺は畑ばかりだから、この節の西北の風が吹く時、小僧の定吉に外で手伝わせると、二階からでもよく飛びますよ」

「で?」