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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens
と、時をうかがっていたものでした。偶、清盛が子の重盛以下五十余人をつれ、紀州へ旅立ったことが、彼らに、大事決行を誘発させ、院御所の夜襲、皇居の占領、天皇上皇の幽閉という、前古にない日本の暗夜と、殺戮を照らす劫火の巷とを、現出しました。
清盛は、早馬をうけて、紀伊半島の遠い旅先で、それを知る。
はからずも、この騒乱の帰着は、結果的に、義朝対清盛の武力に賭けられるしかありません。信頼、惟方などの考え通りにもゆかず、彼らが敵としていた信西入道にも運命は何も幸いしない。天意の皮肉、歴史のおもしろさ、じつにそれは、人為を超えた自然の大作用が人為のほかにあることを証しています。そして、この時を境として、源平紅白の二世界に地上は染め分けられました。紅地帯に住む者、白地帯に生きぬく者、いわゆる源平時代はここに始まり、平安朝貴族の夢は今、終焉の炎にくるまれています。(二六・一・七)
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挿画の杉本健吉氏も、清盛像の大写しには、はなはだ要意慎重で、なかなか筆を下ろして来ません。これは小生の文章がなお清盛の性格を充分に描破し得ていない不備にもよるでしょうが、一般に、清盛といえば、専横暴慢な脂ぎった浄海入道という牢固としてぬき難い先入観の障壁に囲まれているせいも大いにあるでしょう。