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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens
人々を見る。
中で、文覚の出家は、異色である。文覚の行き方は「今昔物語」などが語っている“持経者”――つまり大峰や那智や高野などの深山幽谷を、修行の道場とした一群の仏者と性質が似かよっている。
こう見てくると、上は法皇、親王、女院から下は家なき流浪者の中にまで、出家は行われた。その頃の狭斜の街たる妓院(遊女、白拍子のおき屋)の主にさえ、禅尼と呼ばれる者がいた。義経の愛人、白拍子の静の母は磯ノ禅尼であった。
こういう社会なので、清盛も出家した。彼が浄海と法名をつけたのは、あくまで“海の平氏”たるを誇りとし、海に志があったからにちがいなく、剃髪の動機は、五十一歳の春の病気からで、ほかに何を悟ったわけではない。ただ風俗に従ったまでである。
彼の非凡さは、上下唯仏の中で、平然と、仏毒の害や迷信の矇を知って、仏教一色の思想から超越していたところにある。清涼殿や各寺院などで、よく旱魃のために雨乞いをしたりするのを、彼は大いに笑っていた。
晩年、彼が南都の東大寺を焼き払ったことなども、後世、信長が叡山焼打ちをやったのと同一筆法で、乱暴といえば乱暴だが、そこにはもう真の“仏法”はないことを見抜いていた。