Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens

Aozora Bunko

このコースは人の通わないところである。滝ノ沢峠をこえ、温川の一軒家に、十一日間ほどいて原稿を書き、黒石街道を歩いて、弘前まで出たのであった。

この間、毎朝、宿屋を出るときに、ゴマ塩をまぶした大きな握り飯を一つ握ってもらい、ハンケチに包んで、腰にくくり、それを食べるのを楽しみに、自分で自分の空き腹を釣っては、足まかせに歩くのである。その当時、完全に胃腸は治った気がした。

ところが、都会生活の机に返ると、たちどころに、その効もなくなってしまった。慢性は慢性のまま今日につづいている。しかし、今でも身に残っているものがある。それはそういう特殊な旅をした体験である。

こんどの第七巻には、鞍馬の牛若が、京を離れて、みちのくの平泉へ行きつくまでの経路が主題をしめているが、今、装幀された一巻を手にして、十数年も前の、そんな旅の体験が、ずいぶん役に立っていたことが思い返されるのであった。週刊朝日の誌上では、そうも思わず書いていたが、一冊となってから、あらためて思い出されるのである。

また、下総の多々羅や印旛沼附近は、自分の母の郷里の近くだし、武蔵野界隈は、いま自分のいる吉野村から車で東京へ出たり、ゴルフ場へ行くときなど、のべつ縦横に通る所である。