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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens

Aozora Bunko

古典の訓みには、たしかに古雅な匂いや色や情調の響きがあって、よく時代感を醸し出す特長はあるのであるが、現代読みに馴れている読者には、いちいち眼に厄介だし、またなにしろ煩わしい。

「新・平家物語」は、もちろん、現代語を基調としているから、それらの訓みは、みな今日の読み方にあらためている。武者は(むさ)侍は(さぶらい)牛車は(ぎっしゃ)不孝は(ふきょう)禿は(かぶろ)敬白は(けいびゃく)――といった類がそれである。

だから今度の巻の名を「ごさん」と読んでいただくのは例外である。こういう例外も従来、「新・平家」の本文中に用いていないこともない。叡山南都の大衆――などというばあいは、わざとフリ仮名をつけて「だいじゅ」と古典どおりな訓みをつかって書いている。

なぜというに、現代語の大衆という語意と、当時の大衆(だいじゅ)と意味には、相似テ相似ズ、といったような微妙な相違がある。読者の幻想にそれが混同される惧れを抱いたのである。「ごさん」と「おさん」のちがいも、女性が子を産むという根本の事実はまったく同じだが、その様式、四囲の心理、目的、結果など、いかにぼくらの観念と違うものであるかを、この巻の読者には充分理解されることと思う。