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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens
こんなとき、ぼくはいい。体が小さいからである。嘉治さんも、健吉さんも、何度も頭を天井にぶつける。ひとり、マ氏は喜々としゃべりつづけて行く。このジープと、この国際的な青年の姿とは、まるで一つ性能のものみたいだ。感傷らしい、あるいは、屈託らしい低徊はどこにもない。あるのは、走ることだけだ。大勢の賑やかな友人が待っている。晩餐の御馳走が待っている。またそれからのあす、あすからの希望と仕事とが待っている。そしてジープも若い。筋肉も若い。
運転台のマ氏の背を見ていると、日本の今の青年にないものが思われてくる。日本の今の青年には、ぬかるみでも凸ぼこな道でも走破してゆく風の快味がわからない。勤勉の汗を知らない肌には当然それもわかっていない。ゆくての希望が掴めないからだともいえよう。道を与えられていないジープが日本製の青年だ。日本製だって立派なエンジンは持っているが、ほんとの社会苦との闘いも人生踏破も経ないうちに、人生懐疑とか、ニヒル(虚無)な分裂症などを起こして、あたら、生命をサビ朽ちさせているのが多い。
これは、たれがいけないのでもなく、大きな国運というものであろう。