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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens
怠慢の罪をお詫びしておく次第です。
浅草駅発、鬼怒川温泉行。秋びより。
朝の紙クズは、浅草名物といってもいい。やたらに紙クズが舞う街頭から松屋デパートのホームへ、時間かっきりに駆け上る。「やあ」「やあ」ともう先に来ている杉本画伯、嘉治さん、杉山局長、春海局次長、高山編集子たち。
電車、八時何十分かに、すぐ出る。
日本の庶民風景というと、競馬、競輪場以外でも、紙クズがつきもの。車中また然り、さいきんの中共では北京も上海もこれが見られなくなったと聞く。どっちが、庶民内容がよく、庶民の肌にあった社会なのやら――と、これは後日感。
「きのうから東京へ出て、お待ちしておりましたんで」と、見知らぬ夫妻にあいさつされる。名刺を見ると、徳泉閣主人、今夜、やっかいになる旅館のあるじであった。
沿道説明はさすが、詳しい。十数年も前には、この電車の窓外には、麻畑が随所に見られ、夏の宵の日光、鬼怒川行などには、麻の香が窓をかすめたものですと、徳泉閣主人、旧事を述懐する。
江東地区の小工場員らしい若い一組が、到着地を待ちきれず、早くも一升ビンを開けていた。二、三は必ずキャメラを持ち、ネクタイは原色好み。