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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens
正直、あのときの武者三人像の方は、読者にも不評判のようであった。そんな話を今、笑いながら打ち明けて来たのだった。
「そうしてもらえばよかった」と、健吉さんも今にして惜しがった。わざわざ写生に出かけた程なので、描いたことは何枚も描いたのである。即興的なものがいつの場合でもいちばんいいのらしいんですがネ、ともいい足した。
そして、窓外へ伸び上がり「あそこです、今井兼平の塚のあるのは。そして、あの森の向うを少し行った所が、義仲寺ですよ」と、未練そうに、何度もぼくらに指さすのだった。といっているまに、列車は大津の駅に入っていた。
兼平の墓義仲の寺みな青葉
おもわず駄句が口をついて出る。そして大津駅のそばが、きのうあたりの火災らしく、五十坪ほど焼けていたのを見てまた、
初蝉やあつたばかりの火事の跡
義仲寺の“筆間茶話”では、読者からぼく宛てにも、誤謬を正した御注意がたくさん来た。
「木曾殿と背中あはせの寒さかな」は芭蕉の句ではなく伊勢の又玄という俳人の句なること、幻住庵は同寺内ではないことなど、ぼくの杜撰もここに訂正しておく。
同時に、あのとき使えなかったぼく宛ての健吉さんの絵手紙の一葉を(文面の部分は略して)この回の挿絵に入れた。