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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens
きのうは、花森氏、扇谷氏などと、仕事のことで、神戸で一しょになり、信平息子は、前夜の疲れで宿屋で昼寝してしまったが、おふくろさんひとりぼっちでぼんやりしているのを見、花森氏が「どこかへ御見物に行きませんか」と誘ってあげたところ、「神戸の桟橋へ行ってみたい」というので、花森氏がひとの母親をつれて、そこへでかけて行ったそうである。
そして後で「なんで埠頭へなど行きたがったのだろう」と、信平息子にそれを質したところ、戦後、信平氏の弟の遺骨を迎えたのが神戸埠頭だったので、老母はもいちどそこに立って、いまは世にないもう一人の息子を偲び、その非業な死を弔ったのだろうといったということであった。
そんなうわさをして、扇谷氏は、「ぼくも帰京するとすぐにまた、東北読者大会へ行くので、こんどは信平にならって、一時間でも故郷の年よりに顔を見せてやりたい」といったりした。
辛辣なジャーナリストたちは、その辛辣に輪をかけたような雑誌目次を週に月々に競作している。現に、文春の五月号かには、「親孝行無用論」なども掲げられていた。だがジャーナリストにしても、やはり一個の親と子の関係では、それぞれな暮し方と自己の楽しみ方をしているものとみえる。