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ずいひつ しんへいけ
随筆 新平家
吉川 英治
Read 随筆 新平家 (ずいひつ しんへいけ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 213,575 characters · 424 screens
総じて、義仲を考え直したといわれる方が多い。著者として望外な収穫である。
けれど日本の郷土自慢というものは格別である。今日でも、木曾地方へゆくと、余りにも義仲を英雄視しすぎている風がないでもない。
一昨年の木曾旅行中、同地の識者たちから、“筑摩史料”とか“旭将軍関係史料”などの写しを拝借して来て、随所に役立っていたが、義仲を書きつつある途中から再三「返してくれ」との御催促で、ぜひなくお礼をいって返してしまった。おそらく郷土の義仲びいきには、気に入らなかった節があったのかもしれない。
筑摩史料というのは、明治何年かに出た同地方の郡史で、有名な「筑摩鍋」だの、山村良景の「木曾考」だのも合載されており、義仲の駒王時代の遺蹟とか、民土風俗などを知るには、良い書であった。しかしこういう稀覯本になると、ほかで探しえられないので、後では困った。小説中の小ミダシにつかった、
“運と岩茸は危ない所にある――”
という木曾地方の俚諺なども、同書のうちから採ったのである。
いつか浦松佐美太郎氏に会ったとき、氏がいうには、これと同じ意味の諺がヨーロッパにも古くからあるとのことであった。