Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
うんなんしゅびへい
雲南守備兵
木村 荘十
Read 雲南守備兵 (うんなんしゅびへい) by 木村 荘十 (きむらそうじゅう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 37,859 characters · 76 screens
孫伍長
孫伍長
一九四〇年……曽つて雲烟万里の秘境として何者の侵攻も許さなかった雲南府も、不安と焦燥の裡にその年を越そうとしていた。
五華山を中心に、雅致のある黄色い塀や、緑の梁や、朱色の窓を持つ古風な家々を、永い間護って来た堅固な城壁も――海抜七千尺に近いこの高原を囲む重畳たる山岳も――空爆の前には何の頼みにもならなかったのである。
その宵も南門外の雲南火車站に着いた小さな貧弱な列車からは、溢れるように避難民が吐き出されて火車站のフランス風の玄関から、新市街へ流れ出していた。
ここの人々は、今ではその後に十万から二十万以上にも殖えていたが、人が殖えるごとに、
「仏印国境から日本軍が攻めて来る」
という噂が、だんだん確からしさを帯びて来て、住民達の憂欝と、焦燥と、自棄の中に街全体を落つきのない騒然たるものにしていた。
孫伍長は、群集に押し出されるように火車站の構外へ出ると、街燈の下に立止まって、大きく呼吸をついた。前線に派遣されて以来三年振りで見る故郷の印象の、何という変り方であろう。
そこには、相変らず、古風な低い屋根の、ぎっしりつまった懐しい街はあるが、夜空は妙に赤く、何か火事場を思わせるような慌しい空気が漂よっている。