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たかしまいし

高島異誌

国枝 史郎

Read 高島異誌 (たかしまいし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,007 characters · 26 screens

Aozora Bunko

お止めなされい! お止めなされい!」

すると松太郎はカラカラと笑い、

「たかが妖怪ではござらぬか。何んの兇変など受けますものか」

「いやいや夫れは広言というもの。現に此処に純八殿が災難を受けられたではござらぬか」

「拙者の言葉が広言とな?」松太郎は苦い顔をしたが、自然言葉も荒くなり、「広言か否かは試した上の事! 憚ながら此松太郎には、五分の隙もござらねば、妖怪の魅入る可き道理ござらぬ!」

すると今度は純八が、ムッとしたような顔をしたが、

「これは筒井殿お言葉じゃ、然らば拙者には魅入られるような、武道の隙間ござったのかの?」

「左様」

と、売言葉に買言葉、つい松太郎は云い切った――

「左様、隙間があったればこそ、魅入られたのでござろうがの」

「益々以って異なお言葉、親友とて聞捨てならぬ! 先ず聞かれい筒井殿、これが人間と人間との、相対太刀討又は議論に、打ち敗かされたと申すなら、いかにも武道不鍛錬の隙間と申されても為方ござらぬが、名に負う相手は妖怪でござる。しかも神変不思議の術を自在に使う恐ろしき奴! 魅入られるのは不可抗力じゃ! なんと左様ではござらぬかな?」

併し松太郎は嘲笑って益々自説を固執した。