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たかしまいし
高島異誌
国枝 史郎
Read 高島異誌 (たかしまいし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,007 characters · 26 screens
「他人に好意を尽くすことが、何んの災難になりましょうぞ!」
「その好意もよりきりじゃ」――千斎はいとも苦々しく「悪虫妖狐魑魅魍魎に、何んの親切が感じられようぞ。寸前尺魔、危険千万、愚老は是でお暇申す。貴殿もご注意なさるがよい」
気にかかる言葉を後に残して、医師千斎は帰って行った。
「悪虫妖狐魑魅魍魎に何んの親切が感じられようぞ? ハテ、これは何ういう意味であろう?」――純八は口の中で呟いて、多少心にもかかったが、再び病室へ取って返えし、今はスクスクに睡っている気高い老僧の顔を見ると、からりと心が澄み返えり、何時かそんな言葉を忘れて了った。
その翌日のことであったが、僧は褥から起き上がり、昨夜からの介抱の礼を述べたが、縁側へ出て草鞋を穿こうとした。
驚いたのは純八で、周章てて衣の袖を引き、
「是は何んとなされます? よもやご出立ではござりますまいな?」
「いやいや是でお暇でござる」僧は微妙な笑い方をし、「是非発足たねばなりませぬ。と申すのは此辺に愚僧の敵がござるからじゃ。いやいや長袖と申す者は、変に意地くねの悪いものじゃ。貴殿もご用心なさるがよい。あの千斎とか申す薬師、ろくな者ではござらぬ依って……が貴殿のご親切は愚僧決して忘れは致さぬ。