Japanese reading practice

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Read 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 261,216 characters · 521 screens

Aozora Bunko

「だ、だれかいねえか! 仲居! やい! 仲居はいねえのか」

――その仲居たちはさっきから、庭先へなだれてきた花笠、手拭、道化面などの人々と一緒に、乱舞の渦にまきこまれ踊り狂っているたけなわなので、孫兵衛のそれほどな呶鳴り方も通らなかった。

「ちぇッ、こうしちゃアいられねえ、悪くすると周馬の野郎め、後へ戻っておれの留守を……」と、わななく怒りの手に、そぼろ助広をつかんだ孫兵衛、いざるようにして縁側へ出たが、そこの沓石へ片足をおろした途端に、ガッと、苦い水が口から走った。

「いけねえ! ……どうもただな痛みじゃねえ。うーム……」と、強気だが、よほど胸苦しいとみえて、縁側に仰むけに寝てしまった。そして、腰の印籠を引ッちぎり、二ツに割って中の薬を頬ばるように口へ入れた。

手を伸ばして、盃洗の水を……。

ゴク、ゴク……と飲み干すと一緒に、指を口にさし入れて、のめるように庭へ下りる。

しばらくかがみ込んでいるうちに、毒気のさめた孫兵衛の顔――白く青味の蔭をもって、常の悪相に加えて、ひときわ鋭い険が立った。

「青二才奴!」

助広をひっさげて走りだした。

茶屋の裏であったか表だったか、出た所すら彼自身知っていない。