Japanische Klassiker mit Furigana
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あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
Lesen Sie あなたも私も (あなたもわたしも) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.405 Zeichen · 263 Bildschirme
この夏の終りごろまでは、サト子は、後さがりばかりしているような、無気力な女ではなかった。生きてゆくことに希望をもち、斬新な生活の方法を考えだして実行するという、張りのある世渡りをし、一日一日を満足して生きていたものだが、このごろ、心の支えがなくなったようで、すこしこみいったことになるとすぐ、どうでもいいと投げだしてしまう。
あまりひどい貧乏では困るが、見た目におかしくなければ、着るものなんかどうだっていい。食べてみたいというようなものもない。腹がふさがる程度に食べられれば、それで結構といったぐあいで、どうしたいというような欲望は、ぜんぜんなくなった。
「二十四だというのに、これはまたひどく枯れきったもんだわ」
サト子自身も、おかしいと思っている。こんなことばかりしていると、カオルが言ったように、意地の悪い、ひねくれたオールド・メードのようになってしまうのだろう。
越中島の白い煙突、黒い煙突からたちのぼる煙が、空から吹き落され、黒い靄のように掘割の水のうえを這っている。サト子は、そろそろ荒れかけてきた、さわがしい風景をながめながら、あのころ、あんなに張切っていたのはなんのせいだったろうと、しんみりと思いかえしてみた。